山田道夫他 「応用のためのウェーブレット」 を読んだ
ちょくちょく名前を聞くけど、あまりよく分かっていないウェーブレットを勉強しようと思い、「応用のためのウェーブレット」を買って読んだ。
以下、感想など。
名前の通り、ウェーブレットを使うために、ウェーブレットの基本的な数学的事実を勉強したい人が読む本。
「応用のための」ウェーブレットの基本的な内容が載っているが、応用自体はほとんど載っていない。
読むために必要とされる前提知識としては、微積分、線形代数(ベクトル空間の意味が分かる程度)、フーリエ変換(1章はフーリエ変換の解説から始まっているが、フーリエ変換を全く知らない人はあれだけでは理解できないかも知れない)くらい。
複素解析で出てくる事実なども少し使っているが、知らなくてもなんとかなる程度。
想定される読者としては、ウェーブレットの数学的な基本を知りたいが、めんどくさい証明などは追いたくないという人。
証明などは基本的に、デルタ関数を使ったりしており、数学的に厳密さより分かりやすさや簡潔さを優先している。
また、難しい証明や計算がめんどくさそうなところなどは、単に証明できると書かれているだけで、詳細な証明には立ち入っていない。
したがって、ウェーブレットを数学的に厳密に理解したい人は、もっと数学的な教科書を参照したほうがいい。
真面目に証明等は追わずに、ウェーブレットの数学的な事実を手短に知りたい人におすすめできる本でした。
よかったところ
かなりコンパクトにまとまっているので、割りとすぐに読めます。
自分は3章までしか読んでいませんが、2-3日くらいで読めました。
下手な比喩などは使わずに、数学的な事実とその意味が書かれているので、ある程度数学ができる人には分かりやすいと思います。
自分は、フーリエ変換自体は知っていたのですが、変換前の関数の解析性と、変換後の関数の収束性(周波数が大きいところでの)の関係などは知らなかったので、その辺の内容がウェーブレットと絡めて理解できたのは良かったです。
式変形は丁寧で基本行間がない。ペンがなくても読めます。
よくなかったところ
4章の実践的な部分がmathematicaという一般家庭にはないソフトウェアを使っているので、大学に所属していたりしてmathematicaを持っている人でないと試せない。
1-2章が式の意味するところなどを説明しているのに対し、3章の書きっぷりは分かりにくかった。
具体的には、証明や導出等なく式が出て来るのはいいが、その式の意味するところを説明したり、後でその式を使わないものが3章には多々あったので、読んでいて気持ち悪かった(例えば、式(3.96)-(3.104)とか。一部は解釈を説明していしているが)。
あと、スケーリング関数を使ってウェーブレットを構成するモチベーションとかも、よく分からなかった。
これは単に自分があまり応用を知らないからな気がするが。
他の本
- 「やり直しのための通信数学」という電子書籍のウェーブレット編を買ってみたが、微妙な比喩とか、無駄に具体的な数字を使った計算が出てきたりして自分には無理だった。
- 「ウェーブレット入門―数学的道具の物語」というウェーブレットの歴史が書かれた本をちらっと眺めたが、自分はウェーブレットの歴史には興味がなかったらしい。